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ロータスは、なぜトヨタエンジンを積んでいるのか?

 

■ロータスモデル誕生の歴史


 

 

 

イギリスのスポーツカーメーカーであるロータスのルーツは、いわゆるバックヤードビルダーで、1948年に当時大学生であったコーリン・チャプマンが、ガレージで古いオースチン7をベースにプロトタイプ・マシンを製作し、レースに参戦したことがきっかけでした。

 

チャプマンは大学を卒業すると、2台目のトライアルカーを製作。

 

より強力なフォード製のエンジンを搭載したこのマシンが、ロータスと名付けられました。

 

自動車メーカー「ロータス・エンジニアリング」としてスタートしたのは1952年で、独自の鋼管スペースフレームを骨格に持つ、市販車マーク6の販売を開始。

 

さまざまなエンジンを搭載することが可能な設計が施されたマーク6は大成功を収め、1955年に正式に自動車メーカーとして認められました。

 

こうしてロータスは、その卓越したエンジニアリング技術で商品価値を生み出すメーカーとなりました。

 

では、ロータスが手がけた数々の名車に注目しながら、その歴史をたどってみましょう。

 

 

■フロントエンジンスポーツカーのお手本。セブン(1957)


 

ケータハム セブン

 

ロータス・セブンは、チャップマンの設計理念である「軽量化」を体現するモデルです。

 

スペースフレームのシャシーにアルミパネルを貼った外観と、フロントダブルウィッシュボーン、リアAアーム式のリジッドサスというシンプルな構造で、完成車とキットの両方で発売されました。

 

ちなみにキットで販売された理由は、部品として購入できれば物品税もかからず、しかも自分の好きなエンジンを組み合わせることも可能というもので、「コストを抑えながら自分の好きな1台を作ってレースに参加する」という、サンデーレーサーに優しい設計でもあったのです。

 

完成車に搭載されたエンジンは、フォードのKENT(ケント)や、初代MINIで有名なBMC(ブリティッシュ・モーター・コーポレーション)のAシリーズエンジンなどでした。

 

ロータス・セブンは当初ロータス社で生産されていましたが、手作業による生産工程が多く生産効率が悪かったこともあり、収益を考えて1973年に製造販売権をケーターハム社に売却。

 

ケーターハムは、いまでも基本構造を変えずに製造・販売を続けています。

 

 

■FRPモノコックを市販車で採用。エリート(1957)


 

 

ロータス・セブン登場と同じ1957年、シャーシを兼ねるFRPモノコックボディを使用したスポーツカー、エリートが登場しました。

 

流麗で美しいクーペスタイルの軽量ボディには、イギリスのエンジンメーカー、コヴェントリー・クライマックス社のFWEが搭載されました。

 

このコヴェントリー・クライマックス社は、フォークリフトや消防ポンプのエンジンを作っていたメーカーで、のちにレーシングカーエンジンを製作、F1エンジンも供給するという面白い経緯を持つメーカーです。

 

足まわりには、フロントがダブルウィッシュボーン、リアにはチャプマンが考案したチャプマンストラットが採用されたこともトピックです。

 

結果、卓越したハンドリング性能が高く評価され、このモデルによりロータスのスポーツカーメーカーとしての地位が不動になったと言っても良いでしょう。

 

 

■トヨタ2000GTも模倣したXボーンフレーム。エラン(1962)


 

 

1962年、エリートの後継モデルとして、誰もが認めるロータスの名車エランが登場しました。

 

北米市場を意識したオープンカーであるエランは、登場するやいなや瞬く間にスポーツカーのお手本として認識される存在となりました。

 

XボーンフレームにFRPボディを載せたパッケージに、エンジンはイギリス・フォードのベストセラーカー、コーティナに搭載されていた1.5L 直4OHVの116Eをベースに、独自のDOHCヘッドをドッキングしたいわゆるロータスツインカムを搭載。

 

ちなみに、Xボーンフレームにボディを載せる構造は、後にトヨタ2000GTでも採用された手法です。

 

エランは、その流麗で美しいスタイリングと、優れたハンドリング性能、パワフルなDOHCエンジンを搭載しながら手ごろな価格設定で、大人気となりました。

 

 

■漫画で有名なハンドリング。ヨーロッパ(1966)


 

1966年、ロータス初のミドシップスポーツカーとして登場したのがヨーロッパです。

 

フロント部分は流れるように美しく低く構えたスポーティなスタイルで、リアセクションはバーティカルフィンの装備によってサイドが立ち上がったバンのようなデザインが特徴です。

 

バックボーンフレームにFRPボディを載せるという基本構成はエランと同様ですが、ヨーロッパでは運動性能を高めるため、ミドシップレイアウトが採用されています。

 

初期モデルがシリーズ1、快適性を高め、右ハンドルが作られるようになったシリーズ2、DOHCエンジンとなったツインカム、さらに出力を向上させたスペシャルがあり、シリーズ1とシリーズ2にはフランスのルノー社のファミリーカー、16の1.5Lエンジンを縦置きに搭載。

 

ツインカム以降は、エランのシリーズ2以降と同じ1.6Lのロータスツインカが搭載されるようになりました。

 

軽量ボディに素晴らしいハンドリング性能、ミドシップという凝ったレイアウトながら手ごろな価格など、ライトウェイト・スーパーカーのお手本のような存在として、メディアからも賞賛を浴びました。

 

 

■映画007にも登場。エスプリ(1976)


 

 

ヨーロッパの後継モデルとして登場したエスプリは、パリのモーターショーで初披露され、世界中をあっと言わせました。

 

イタリアのジウジアーロが手がけたデザインはドラマティックで美しく、それまでライトウェイト・スポーツを手がけてきたロータスの新たな歴史を飾るのに、もっともふさわしい1台となりました。

 

エンジンはイギリスの自動車メーカー、ボクスホール製のエンジンをベースにロータスが開発した2.0L 直4DOHCを搭載。

 

後に、追加されるV8エンジンも自社製エンジンでした。

 

 

■いすゞと化学反応によって生まれた2代目エラン(1989)


 

1980年代はロータス・カーズにとって激動の年となりました。

 

まず1982年、創業者のコーリン・チャップマンがわずか54歳という若さで亡くなりました。

 

これにより経営が悪化し、1986年にはGM(ゼネラルモーターズ)の傘下に入ります。

 

そんな状況の中登場したのが、2代目となるエランでした。上記の理由からGMグループのコンポーネンツを使用して開発する必要があり、エンジンについてはGMと資本提携関係にあったいすゞ自動車の小型乗用車ジェミニに搭載された4XE1という型式の、1.6L 直4DOHCが採用となりました。

 

そのスタイリングは、ウェッジシェイプのミドシップ車的なシルエットでしたが、蓋を開けてみれば駆動方式はジェミニと同じFFで、おおくのファンを落胆させました。

 

このエランⅡは、後に韓国キア自動車に売却され、ビガートという名前で日本にも輸入されました。

 

 

■ロータス大躍進のきっかけとなったエリーゼ フェイズ1(1996)


 

 

1990年代のロータスを象徴する1台として、エリーゼを外すことはできないでしょう。

 

小型で可愛らしいスタイルのスポーツカーは、押し出しアルミをエポキシ樹脂で接着させるという方法でシャーシが組み立てられており、FRPの外装はもちろん、アルミのサスペンションアップライトとブレーキディスクにもアルミが使われるなど、徹底的にと軽量であることにこだわって設計されています。

 

エンジンは初期モデルに、ローバー社のKシリーズと呼ばれる1.8L 直4DOHCエンジンを搭載。

 

エリーゼはロータスの予想を超える大ヒットとなり、生産体制を見直さなければならないほどになりました。

 

 

■進化型はトヨタユニットを搭載。エリーゼ フェイズ2(2001)


 

縦長の異形ヘッドライトをはじめ、大きくエクステリアが変更されたフェイズ2は、初期モデルこそフェイズ1と同じローバー製のエンジンが搭載されていたものの、2004年にはトヨタの1.8L 直4DOHC VVTL-i(連続可変バルブタイミング・バルブリフト機構)エンジン、2ZZ-GEを搭載したモデルが追加されました。

 

のちにローバー社が経営破綻したため、2006年以降エントリーグレードを含むすべてのエリーゼに、トヨタのエンジンが搭載されることになりました。

 

エリーゼは商業的にも大成功を収め、ロータスの経営危機を救うモデルとなりました。

 

搭載されるエンジンが諸事情により変化しつつも、熟成を進めていきました。

 

 

■エヴォーラ(2009)


 

 

エヴォーラは、エリーゼ以来新設計となる、新しい2+2(4人乗り)のミッドシップスポーツカーです。

 

搭載されるエンジンは、エスティマやハリアー、アルファードに搭載されたトヨタ製3.5L V6の2GR-FEをロータスがチューニングしたもので、最高出力は280PS、車両重量は1,382kgというスペックでした。

 

エリーゼよりも高級志向のスタイリングではありますが、いわゆる”スーパーカー”のような存在ではなく、ピュアスポーツカーの雰囲気を壊さず、扱いやすいサイズと快適性、卓越したハンドリング性能など、ロータスのアイデンティティがしっかり反映されているのが特徴です。

 

通常、自動車メーカーはエンジンまで自社で生産することが普通であるように思えますが、エンジン開発には莫大なコストがかかるため、結果、製品の価格も跳ね上がってしまいます。

 

そこで、もともとシャーシとサスペンションのエンジニアだったチャップマンが、過度な装備や無駄を省いて、ユーザーにできるだけ安くスポーツドライビングを楽めるクルマを提供するため、ロータス車のほとんどは他メーカー製のエンジンを採用していました。

 

その伝統は現在でもかわらず、最新のロータスにはトヨタ製エンジンが搭載されているのです。

 

ロータスは、レースに打ち込むコーリン・チャップマンのそんな思いとこだわりが詰まったクルマなんですね。

 

 

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