もはや絶滅危惧!? V12エンジンを搭載したクルマたち
環境問題が叫ばれ、多くの自動車メーカーがこぞってハイブリッドやEV車を生産するようになってきた昨今。
その存在すらも危ぶまれているのが、大排気量&多気筒エンジンです。
なかでもV型12気筒は、生産コストやメンテナンスコストの問題に加え、 サイズや重量、燃費やCO2などの環境性能といったさまざまなデメリットによって、存続が危ぶまれています。
しかし、そんな時代でもあえてV12エンジンにこだわり続けているモデルを紹介しましょう。
■V12エンジンの魅力

直列に並んだ12個のシリンダーを、6気筒ずつ左右に開いてV字型に配列したエンジンがV型12気筒です。
世界初の量産V型12気筒エンジンを搭載した自動車は、1916年にアメリカのパッカード社が開発したツーリングモデルに搭載されたもの。
アルミニウム製のピストンを用いたこのV12エンジンは60度のバンク角をもち、3,000rpmの回転時に85馬力を生み出すことができました。
多気筒にすることで強力なパワーを持つだけでなく、エンジンの振動を抑えることで静粛性を保つこともできるV12エンジンは、以降多くのレーシングモデルやフラッグシップモデルに採用されることとなります。
V12エンジンを有名なものとしたのは、1960年代から70年代にかけて誕生したスーパーカーでしょう。
それまでにも、アルファロメオやフェラーリ、ロールス・ロイスがV12エンジンを搭載するモデルを世に送り出してきましたが、ランボルギーニ ミウラやカウンタック、フェラーリ デイトナや365GT4BBといったスーパーカーの登場で、高出力V12=スーパーカーというイメージが確立されました。
いっぽうで、60度のVバンクを持つV型12気筒は完全バランスといわれ、力強い走りと振動のない滑らかな加速を味わえることから、ジャガー デイムラー ダブルシックスやメルセデス ベンツ Sクラス、BMW 7シリーズ、トヨタ センチュリーといった、ショーファードリブンなどでも採用されてきました。
ただし、V型12気筒はエンジンが大きく重くなり、それをおさめるためのスペースづくりの難しさや、車重増にともなう慣性モーメントの不安定さ、さらにブレーキ制動力の強化など、多くの課題がもたらされることも事実。
さらに近年では環境問題における燃費性能が重要視されていることもあり、時代の移り変わりとともにV12エンジンは淘汰されつつあるのです。
■メルセデス・ベンツ Sクラス

言わずと知れたメルセデス ベンツのフラッグシップサルーン、SクラスにV12エンジンが搭載されたのは、3代目のW140からです。
迫力のあるフロントマスクと先代から大幅に拡大されたボディサイズ、車内の静粛性を高めるためにサイドウィンドウを2重にするなど、さまざまな面で押し出しの強かったモデルですが、そのフラッグシップとなるS600に搭載されました。
以降歴代のSクラスでは、フラッグシップにV12エンジンを搭載しています。
現行SクラスのW222には、6.0L V12 SOHCツインターボエンジンを用意しており、最高出力390kW(530PS)/4,900〜5,300rpm、最大トルク830Nm(84.6kgm)/1,900〜4,000rpmを発生。
最大トルクを低回転域で発生することで、街中での加速は滑らかそのもので、車内の静粛性もトップクラスを誇ります。
また同モデルのAMG版となるAMG S65ロングにいたっては、最高出力463kW(630PS)/4,800〜5,400rpm、最大トルク1,000Nm(102.0kgm)/2,300〜4,300rpmという怒涛のスペックを誇っています。
■フェラーリ 812 スーパーファスト(812 GTS)

2017年3月にフェラーリのフラッグシップとして登場したのが812 スーパーファストです。
フェラーリの創業70周年を記念して発売されたこのモデルは、6.5L V12エンジンをフロントミッドに搭載しており、その最高出力はなんと588kW(800PS)/8,500rpm、最大トルク718Nm(73.2kgm)/7,000rpmを発揮。
そのパワーは桁違いで、これまでフロントミッドエンジンカーで実現されたことがない、リッターあたり91kW(123PS)という数値を叩き出し、新たなフロントミッドエンジンカーのベンチマークとなっています。
もちろん、ただパワーがあるだけではなく、レースによって磨き上げられた812は空力性能も優れており、先代モデルのF12と比較するとダウンフォースは10%向上。
さらに、フェラーリ初の電動ステアリング(EPS)によって、ハンドリング性能も高められています。
2019年9月にはスパイダー(オープンカー)の812 GTSとして生まれ変わっており、50年ぶりのフロントにV12エンジンを搭載したスパイダーモデルとして販売しています。
■ランボルギーニ アヴェンタドール

スーパーカーブームをけん引したランボルギーニは、最初の量産車である350GT(フロント縦置き)以来、フラッグシップにV12を採用しています。
現在は、アヴェンタドールがそのポジションに付いており、2010年をもって生産を終了したムルシエラゴの後継モデルとして2011年のジュネーブショーでデビューしました。
カーボンファイバーモノコックを採用したエッジの効いたデザインは、かつて限定車として発売されたレヴェントンを彷彿とさせています。
ミッドシップに搭載されるエンジンは、新設計の6.5L V型12気筒。
そのスペックは、最高出力515kW(700PS)/8,250rpm、最大トルク690Nm(70.3kgm)/5,500rpmというもので、0-100km加速は2.9秒、最高速度は350km/hと発表されています。
588kW(800PS)の812 スーパーファストの最高速度でも340km/hですから、その走行性能の高さが伺い知れます。
2016年には、515kWから544kW(740PS)へとスープアップされた6.5L V12エンジンを搭載したアヴェンタドール Sが登場。
エクステリアはさらなる進化を遂げ、一部造形にはカウンタックへのオマージュも見受けられます。
走行性能といい、デザインといい、ランボルギーニらしさがしっかり感じられるモデルとなっています。
■ロールス・ロイス ファントム

ロールス・ロイスのフラッグシップとなるファントム。
1925年から使用されている歴史あるネーミングのモデルに初めてV12エンジンが搭載されたのは、1935年のこと。
エンジンは、60度のバンク角をもつ7.3L V12で、スペックは未公表ながら圧倒的な静粛性を誇っていたことで知られています。
その後のファントムは、直列8気筒やV型8気筒などに回帰。
ファントムが、ふたたびV12エンジンを搭載するのは、BMWオペレーションとなる21世紀になってからのことでした。
1998年にBMW傘下となった後、2003年に発売したファントム7の心臓部には、6.8L 60度V型12気筒エンジンを搭載。
最高出力338kW(460PS)/5,350rpm、最大トルク720Nm(73.4kgm)/3,500rpmで、優れた静粛性とハイパワーで、2.5トンオーバーのボディを粛々と加速させます。
このエンジンは、BMWの傘下となっていなければ実現してなかったでしょう。
V12エンジンは、2018年に登場したファントム8でも採用。
さらに、SUVモデルのカリナンにも搭載されています。
■ベントレー ベンテイガ

ベントレーが手掛けるSUV、ベンテイガ。そのフラッグシップモデルであり、世界最速のSUVを標榜するベンテイガ スポーツには6.0L W12ツインターボチャージャーが搭載されています。
最高出力は467kW(635PS)/5,000prm、最大トルクは900Nm(91.8kgm)/1,750〜4,500rpm。
低回転域からぶ厚いトルクを発揮し、0-100km/hは3.9秒、最高速度は306kmものスペックを誇ります。
さすが、世界最速のSUVを標榜するだけのことはあります。
さらに、48Vの電動式アクティブロールコントロール技術であるベントレーダイナミックライドを搭載。
これにより、走行中のロールが抑えられ、タイヤの接地性が高められることで、快適な乗り心地や優れた操縦性を実現しています。
また、乗り心地と走りのバランスを調節できる4種類の走行モードを搭載。
なかでも、スポーツモードは、W12エンジンと8速ATのレスポンスと、エアサスペンションシステムとベントレーダイナミックライドのレスポンスも向上させることで、一体感のあるダイナミックな走りを体感できます。
公道で乗っても良し、サーキット走行までこなせてしまうハイパフォーマンスモデルと言えるでしょう。

圧倒的な静粛性、巨大なトルクが生み出す滑らかな加速、洗練された走り味など、いずれも現在のダウンサイジングターボにはない魅力にあふれているV12エンジン。
時代錯誤と揶揄されても、その味わいはV12エンジンにしか出せないものなのです。




