BMWのXシリーズはSUVではない?SAVやSACとはどんなコンセプトなのか?
BMWのSUVと聞くとX5やX3と言ったXシリーズを思い浮かべる方が多いはずです。
しかし、BMWはXシリーズのことをSUVと表現せず、SAVやSACと表現します。
これにはどんな意味が込められていて、SUVと比べてコンセプトはどう異なるのでしょうか?
■そもそもSUVとはどんなジャンルなのか?
今や世界的なブームと言える自動車カテゴリーであるSUV。SUVとはSport utility vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の略で「スポーツ用多目的車」という意味合いを持ちます。
ここで表現されるスポーツとは、スポーツカーのような意味合いとは異なり、アウトドアなどの娯楽を指しています。
そのためSUVという言葉を噛み砕くと、アウトドアやレジャーなどの多目的な用途に実用的な車両、という意味になります。
■BMWのSAVとはどんなコンセプトなのか
BMWのSUV、もといSAVというジャンルの名の下に初めて登場したのはX5になります。
SAVというのはSport activity vehicle(スポーツ・アクティビティ・ビークル)の略で、2000年のX5登場時にBMWは「X5はSAVという全く新しいコンセプトのもとに開発したモデル」とアナウンスしました。
BMW曰く、SAVは他のSUVと言われるカテゴリーのモデルとは一線を画すモデルであり、BMWのセダンやツーリングなどの乗用モデルが持つコンセプトに、SUVの利便性を融合させたモデルと位置付けています。
それが意味することはオフロード走破性と、これまでのBMWのモデルたちのような優れたオンロード特性を兼ね備えたモデルということです。
当時BMWはX5のことを「世界で初めてオフロードにも適したスポーツワゴン」と表現をしました。
■SAVのクーペバージョンSACの登場
このようにして登場したSAVというカテゴリーは、X5の成功を受け、弟分となるX3が2004年に登場するなどラインアップを拡大させていきます。
そんな上り調子を見せていたSAVに兄弟とも言えるカテゴリーが登場します。
Sport activity coupe(スポーツ・アクティビティ・クーペ)というカテゴリーです。
SACというカテゴリー名は、2008年に登場したX6で初めて用いられました。
BMWのSACで特徴的なのはそのスタイリングです。
フロントの印象はSAVと同じで、高いオフロード走破性を期待させる最低地上高を確保しつつも、Cピラーは寝かされており、流れるようなルーフラインが印象的で、クーペのようなセクシーなリアビューを持ちます。
BMWはこのSACというカテゴリーが持つボディデザインは、「クーペの持つスポーティで優雅なたたずまいと、SAVが持つたくましさを融合させた高級感があるもの」と表現しています。
SACの具体的なクーペらしさの特徴は、Cピラーやルーフラインだけでなく、ショートなフロントオーバーハング、ロングホイールベース、ロングなリアのオーバーハングなどが挙げられます。
走りの面はSAV同様にBMWのセダンやツーリングが誇る素晴らしいオンロード性能と、優れたオフロード走破性を兼ね備えています。
クーペスタイルになり、全高が若干低くなったことでよりスポーティになったと捉えることもできます。
■ SAVとSACのコンセプトが現れたメカニズム
では具体的な技術的アプローチとしては、SAV/SACはどのような点がSUVと異なるのでしょうか?
BMWはX5登場時に、「従来のSUVは、オフロード性能は優れているが、高い重心や長いオーバーハングなどにより、オンロード性能は優れていない」と述べました。
それに対してSAVのメカニズムの特徴は、BMWのこだわりと言える50:50の前後重量配分、ボディと独立した高いオンロード快適性を誇るサスペンションなどが挙げられます。
しかし、オンロードもオフロードも妥協しないという姿勢が最も現れているのは4輪駆動システムです。
駆動配分を後輪に多く分配し、FRを得意とするBMWらしいハンドリングを実現、もちろん状況によって駆動配分を変化させ、オフロードでの走破性も確保しています。
■他のSUVとは異なるという考えの下登場したSAVとSACというカテゴリー
オフロード性能を高めつつ、オンロードでの性能やハンドリングをセダンやツーリングワゴン並みにするという考えは、「駆け抜ける歓び」を大切にするBMWらしいと言えます。
近年はSUVブームと言える状況ですが、本格的にオフロードを走行するSUVユーザーは少ないと思われます。
そのようなユーザーに対してセダンやツーリングワゴン並みのオンロード性能を誇るSAV/SACはピッタリと言えるでしょう。
もちろん、BMWがオフロード性能も確保していると表現しているだけあって、オフロード走行が不可能という訳ではありません。
普段乗りと時々アウトドアという近年のSUVブームとそのユーザーにマッチするコンセプトなのではないでしょうか。