ジープとアルファロメオは同じ会社!? ステランティスグループのブランド解説
ステランティス N.V.をご存知でしょうか。2021年1月にさまざまなメーカー、グループ会社が合併して誕生した世界第4位の自動車メーカーです。
ステランティスに属するのはジープやアルファロメオ、プジョーなど、もともとはアメリカやイタリア、フランスなどそれぞれの国で有名なブランドを構築してきた歴史あるメーカーです。
今回はステランティスのブランドを紹介していきます。
■多国籍企業ステランティス N.V.
人々の暮らしに欠かせない自動車ではありますが、自動車産業は投資規模が大きく、かつライフスタイルの変化や時代背景、世界情勢などによって売り上げが左右されるため経営が難しい分野でもあります。
長い歴史を持つブランドであっても、またかつてはライバル同士だったブランドでも合併を実施してきた例は多く、特に現在はそれによって生き残る必要がある時代になっていると言えるでしょう。
このようなグループ化は世界的な潮流で、ステランティスはFCA(フィアット・クライスラー・オートモビルズ)とフランスのPSAグループの合併によって、2019年に生まれました。
ステランティス以外にもたとえば日産・三菱・ルノーアライアンスの例もありますし、フォルクスワーゲン・グループにはアウディやポルシェ、ランボルギーニといった有名なブランドが含まれています。
では、ステランティスにはどんなブランドがあるのか、解説していきましょう。
■日本で販売されるステランティスのブランド
・ジープ
第二次世界大戦中にアメリカで活躍した小型四輪駆動車をベースにした市販モデルが戦後登場し、人気となったブランドです。
丸型ヘッドライトや7スロットグリル、台形ホイールアーチといったアイコニックなディテールは現在でもデザインに取り入れられ、小型モデルから本格オフロードモデル、高級SUVなどをラインアップしています。
・アルファロメオ
戦前から高級スポーツカーメーカーとして人気のあったイタリアのブランドです。
古くからレースへの参戦で技術を培い、それを高級GTカーやスポーツカーにフィードバックすることで魅力的なモデルを世に送り出してきました。
戦後は量産モデルを数多くリリースしてきたため、こだわりのデザインやメカニズムがファンを魅了。盾型のグリルがデザインの特徴となっています。
・フィアット
日本でも500(チンクエチェント)などでよく知られるブランドです。
フィアットそのものは1899年にイタリア・トリノで創業した非常に歴史あるメーカーで、小型車を中心としたラインアップで積極的に世界進出を果たし、人気を獲得してきました。
2014年にはアメリカのクライスラーを子会社化したため、クライスラーの代表的なブランドであるジープがフィアット傘下に入ったという経緯があります。
・アバルト
1949年にトリノで設立されたブランドで、前述のフィアット車を使ったレーシングマニファクチュアとして有名になったメーカーです。
1971年にはすでにフィアットに買収されたため、同社のモータースポーツ部門として発展を遂げてきました。
日本では、2012年にフィアットとマツダが提携したことで、ロードスターをベースにした「アバルト124スパイダー」が発売されたことでも知られています。
・シトロエン
1919年創業の歴史あるフランスメーカーです。
金属バネを使わず、窒素ガスと油圧シリンダーを用いたサスペンションシステムのハイドロニューマチックなど独特のメカニズムや、いち早くFF(前輪駆動)やモノコックボディなどを採用するなど、他社に先駆けた先進的な技術を採用することでも有名です。
・DSオートモビルズ
2009年にシトロエンの上位に位置する高級ブランドとして誕生しました。
初期はシトロエンのC3やC4を上級仕様に仕立て直したモデルを制作・販売していましたが、2014年に独立したブランドになってからは独自のデザインが取り入れられています。
フランスの職人が手がけたインテリア(内装)や技、美学をふんだんに取り入れたフレンチ・ラグジュアリーがコンセプトとなっています。
・プジョー
1810年から金属製造業を営んでいたメーカーが、1889年に自動車製造も手掛けることで誕生したフランスの歴史あるメーカー。
小型車を中心とした一般大衆モデルを中心に、ヨーロッパをはじめ世界的に人気のブランドです。
金属製造業時代に品質保証の証として製品に取り付けられたライオンマークがエンブレムにも採用され、近年ではライオンのかぎ爪などをイメージさせるデザインが取り入れられています。
・マセラティ
1914年創業の歴史ある高級スポーツカーブランドです。
市販車のレーシングチューンやグランプリマシンの製作、自動車部品の生産などを手がけ、1963年には4ドアセダン「クアトロポルテ」を発表。
高級スポーツメーカーのイメージを定着させたものの、経営難により1968年にシトロエンに売却されるという出来事がありました。
その後さまざまなメーカーの傘下に入り紆余曲折を経て、現在のグループに収まっています。
日本導入されていないブランド
・オペル
1862年にドイツで創業、1899年から自動車製造を行なってきた歴史あるメーカーですが、1931年にはすでにアメリカのGM(ゼネラルモーター社)の子会社となったり、2009年には親会社のGMが経営破綻したりと紆余曲折を経て、現在のグループに収まっています。
かつて日本でも販売されていたブランドは、まもなく再上陸することが決定しています。
ステランティスには、ほかにかつてのアメリカ”ビッグ・スリー”のひとつクライスラー、フルサイズピックアップを製造するRAM(ラム)、アメリカを代表するスペシャルティカー、チャージャーで有名なダッジ、さらにオペルのバッジエンジニアリング(いわゆるOEM)であるヴォクソール、イタリアの高級ブランド、ランチアなどもステランティス傘下に収まっています。
ステランティスは、イタリア、フランス、アメリカの歴史あるメーカー、ブランドで構成される巨大な自動車メーカーです。
2022年3月にステランティスの長期戦略が発表されましたが、それによると2030年までに「ランチア、DS、アルファロメオ、マセラティ」の全モデルをBEV(バッテリーEV)化するという目標が設定されたようです。
それぞれのブランドの強みを生かしつつ、これからどんな新しいモデルが誕生するのでしょうか。楽しみですね。