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初めてクルマの大量生産を可能にしたメーカー、フォードの歴史

 

自動車産業の黎明期に、いち早く自動車の大量生産を実現させたフォード・モーター・カンパニー(以下、フォード)。歴史に名を遺す多くの名車や、全米で揺るぎない地位を確立しているロングセラーなど、多彩なラインナップを誇るフォードについて、その歴史と名車の変遷に迫ってみたいと思います。

 

 

1903年設立の老舗メーカー

 

 

アメリカの企業家であり技術者だったヘンリー・フォードの手によって1903年に設立されたフォード。19世紀後半にガソリン自動車が登場して以降、次々と自動車メーカーが産声を上げるなか、フォードもA型で自動車の製造販売に着手しました。

その後、1908年にT型を生産。このクルマが、自動車製造にも多大なる影響を与えることとなりました。

 

 

モデルTの大量生産により、フォード生産方式を確立

 

1908年に誕生したT型の最大の特長は、生産方式にありました。各パーツ生産を厳密に管理して互換性を高めるとともに、流れ作業によって作業時間を大幅に短縮。このコストダウンによって、販売価格を大幅に引き下げることにも成功し、庶民の手が届くものとしました。

その結果、1909年にフォードのピケットロード工場で生産されたT型は、年間1.8万台を突破。1911年には、なんと7万台以上の生産を可能としました。

 

さらに1913年には世界で初となるベルトコンベアの生産ラインを導入し、分業化の促進によって製造にかかる時間を減らすことにも成功。

T型は累計1,500万台以上が生産されることになり、フォードのみならず自動車の製造、ひいては社会全体の構造さえも変えてしまったのです。

 

 

フォードが生み出した名車たち

 

・Fシリーズ

創業者ヘンリー・フォードの逝去から1年後の1948年、Fシリーズと名付けられたピックアップ型のトラックが発売されました。

Fシリーズは、全米での販売台数のトップをつねに走り続けているフォードの屋台骨を支える重要なモデルです。

 

Fの後に続く数字が車格をあらわしており、有名なF-150は、シリーズ中でも小さいサイズです。

ちなみに初代Fシリーズは、その愛くるしいフォルムから「パンプキン」というペットネームで親しまれていました。

 

・マスタング

自動車の歴史に名を残すT型の以来の大ヒットとなった初代マスタング。1963年に誕生して以来、現在も生産が続いているロングセラーです。

 

初代マスタングは、2ドアクーペのいわゆるスポーツカーでありながら、実用性の高いボディサイズや手の届きやすい価格帯だったのも人気の理由でした。この成功は、1970年代に次々と生まれた日本のスポーツカーにも影響をおよぼしたといわれています。

 

 

・エクスプローラー

フォードのミドルサイズSUVとして1990年まで生産されていたブロンコ2の後継モデルとして1990年にデビューしたのがエクスプローラーです。

梯子状のラダーフレームに4.0LのV型8気筒エンジンを搭載し、駆動方式にはパートタイム式4WDを採用したエクスプローラーは、のちにアメリカ市場においてSUV売り上げ14年間連続ナンバー1という記録を生み出すほどの大人気モデルへと成長します。

 

角型4灯の武骨なフロントマスクを持った初代とはうってかわり、柔和な顔つきとなった2代目モデルは、右ハンドル車もラインナップされ、日本国内でも人気となりました。

 

・GT

1960年代のモータースポーツシーンにて輝かしい歴史を残したフォードGT40。1966年のル・マンでは表彰台を独占したこの名車へのオマージュとして、2004年にリメイクされたスーパーカーが、フォードGTです。

フォード創立100周年を記念したアニバーサリーモデルは、限定1,500台、さらにフォードのモータースポーツ活動で大きな影響を与えたサリーン工場での生産というさまざまなスパシャリティが用意されていました。

 

5.4L V8エンジンをミドシップに縦型で配置しその後方にトランスミッションを搭載するというレイアウトは、レーシングカーそのもの。GT40を彷彿とさせるデザインながら、21世紀版の新解釈としてボディサイズが大柄になっているのもGTの特長でした。なお2016年の北米国際オートショーでは2代目GTが発表されています。

 

モデルTの世界的な成功により自動車メーカーとしての存在感を増し、のちにビッグ3のひとつにも数えられるほどの成長を遂げたフォード・モーター・カンパニー。歴史に残す名車とともに自動車製造にも革命をもたらしたフォードの存在意義は、創業から100年以上経過した現在も色褪せることはありません。