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最近、ベンツのボンネットのエンブレムを見かけなくなったのはなぜ?

 

メルセデス・ベンツのエンブレムといえば「スリーポインテッドスター」ですね。

 

クルマをよく知らない方でもすぐに思い浮かべることができるほど有名ではないでしょうか。

 

かつてはボンネットの上にオブジェのように立体的に鎮座していたエンブレムですが、最近ではあまり見かけなくなりました。

 

最近見かけないのは一体なぜなのでしょうか?

 

 

■そもそも、いつからボンネットにエンブレムをつけるようになった?


 

 

現在のスリーポインテッドスターの原型が誕生したのは、1926年にドイツの自動車製造会社ダイムラー・モトーレン・ゲゼルシャフト(以下DMG)とベンツ&シー(Benz & Cie)が合併するにあたって新しいエンブレムを製作した時にまで遡ります。

 

DMGは創業以来、スピードの象徴である翼をあしらった複雑なデザインをトレードマークにしていましたが、1909年にスリーポインテッドスターを会社の象徴として定めました。

 

これは陸、海、空でダイムラー製のエンジンが使われていることを示しています。

 

一方ベンツ&シー社は、1903年に「Original BENZ」のロゴを黒いリングギアで囲んだデザインのエンブレムを作成。

 

1910年には数多くの自動車レースでベンツ車が成功を収めていることにちなみ、月桂樹のリングで「BENZ」のロゴを囲むデザインに変更しました。

 

1926年に両社が合併した際、これらのデザインが巧みに融合され、スリーポインテッドスターを月桂樹で囲んだ基本形のエンブレムが誕生しました。

 

エンブレムの上方には「MERCEDES」、下方には「BENZ」のロゴが配置されています。

 

こうして誕生したエンブレムは、メルセデス・ベンツの乗用車にラジエターマスコットとエンブレムとして取り付けられるようになり、この様式は1990年代まで採用されました。

 

1990年を過ぎた頃からはフロントエンドのマスコットは徐々に姿を消すようになり、エンブレムだけがグリルに取り付けられるようになりました。

 

 

■防犯上の理由かと思いきや......安全性の問題


 

 

ボンネット上の立体的なエンブレムやマスコットは、メルセデス・ベンツだけでなくジャガーや、国産車でもシーマやマジェスタ、プレジデント、セドリック/グロリアなどにもかつて採用されていました。

 

高級車の象徴のようなアクセサリーということで、小さい突起物のためよく盗難の対象となりました。

 

近年ボンネットエンブレムを見かけないのは、あまりにも盗難が多かったからかというと、実は違う理由があります。

 

それは、自動車の国際基準調和の一環として保安基準等が改定され、その際に「乗用車の外部突起(協定規則第26号)」についての国際基準が導入されたことに関係があります。

 

この規定によると、2009年1月1日以降に登録される乗用車について、自動車の外部表面には歩行者等に接触する恐れのあるいかなる部品も付いていてはならないことになっています。

 

たしかに、もしボンネットエンブレムのような突起物が付いていれば、万が一歩行者と接触するような事故があった際にそれが凶器になってしまう可能性もあります。

 

つまり、こうした安全上の理由から現在はボンネットエンブレムの採用がほとんどなくなっているわけです。

 

しかし、現行型でもボンネットエンブレムが採用されているモデルが少ないながら存在します。

 

どんな車種でしょうか。

 

そして安全性に対してはどんな対策が施されているのでしょうか。

 

 

■現行型でボンネットエンブレムが残っているモデルを紹介


 

 

メルセデス・ベンツのラインアップでボンネットエンブレムを採用している車種は、フラッグシップセダンのSクラスと、ミドルクラスセダンのEクラス「E 450 マチック エクスクルーシブ」グレード、そしてダイムラーの超高級ブランド「マイバッハ」のSクラスなど、一部のモデルのみとなっています。

 

前述の規定では、「装飾部品であってその支持部から10mmを超えて突出しているものは、その先端部分に対し、装飾部品を取り付けた表面に平行な平面内のあらゆる方向から10daNの力を加えた場合に、格納する、脱落する又はたわむものでなければならない」と記述されています。

 

メルセデス・ベンツの場合、エンブレムに力が加わると倒れるように設計されており、この基準を満たした上で採用されているということです。

 

 

■ロールスロイスはどうしている?


 

 

ボンネット上のマスコットといえばロールスロイスも有名です。

 

こちらには「スピリット・オブ・エクスタシー(フライングレディとも呼ばれる)」というマスコットがボンネット先端に取り付けられています。

 

女性が羽を広げているような美しいマスコットで、ロールスロイスの個性の一つともなっています。

 

ロールスロイスの場合、このマスコットに触ると一瞬にしてボンネットの内部に格納される仕組みになっています。

 

安全性に配慮しているのはもちろん、超高級車のマスコットを盗難から守るという意味でも必要な機能と言えるでしょう。

 

同様の仕組みは、現在フォルクスワーゲン傘下の高級車ブランド、ベントレーの「フランイグスパー」のマスコット「フライングB(前傾したアルファベットのBに羽が生えたようなデザイン)」にも採用されています。

 

最近見なくなったボンネットのエンブレムですが、歩行者への安全性というのが一番大きな理由です。

 

とはいえ全くなくなってしまったわけではなく、安全対策をとった上で採用し続けている現行モデルも残っています。

 

数少ないレアな装備の一つということで、気になる方はぜひボンネットエンブレムありのクルマを探してみてはいかがでしょうか。

 

 

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