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【アルファオメロ ジュリエッタ生産終了】最終モデルの3代目を振り返る

 

■現行の3代目ジュリエッタが生産終了


 

 

世界各国のメーカーがしのぎを削るCセグメントハッチバック市場に、2010年(日本国内では2012年)、颯爽とデビューしたアルファロメオ ジュリエッタ(以下ジュリエッタと表記)。

 

イタリア車らしいエレガントさがぎゅぎゅっと詰まった佇まいは、惜しまれながら生産終了となった現在においても色あせる事がない魅力を持っています。

 

今回は、同社147から客層を引き継いで11年に渡って走り続けた名車、3代目ジュリエッタについて解説していきます。

 

 

■「ジュリエッタ」という名が持つ役目


 

 

戦後しばらく経った1954年のこと。

 

アルミブロックの4気筒エンジンを名匠フランコ・スカリオーネによってデザインされた流麗なクーペボディと組み合わせ、同社のフラグシップであるジュリアの妹分として初代ジュリエッタ(Giulietta=小さなジュリア)は発売されました。

 

その走りは当時をもって「レーシングカー並み」ともいわれ、愛嬌のあるデザインと低めに設定された価格も相まって広く浸透。

 

アルファロメオのその後の道筋を決めたとも言われる重要なモデルとなりました。

 

やがてそこから派生してベルリーナ(セダン)が生まれ、徐々にハイテク化していく自動車業界では流石に古さが隠せず、1965年に一度ジュリエッタの名は消滅。

 

再びその名が使われたのが、ベルリーナをベースとして1977年に登場した2代目ジュリエッタ。

 

その頃同じベルリーナ系列でGT寄りのスポーツサルーンとして君臨していたアルフェッタに比して、より軽快なスポーツモデルとしてこちらも広く親しまれ、1985年に登場するアルファロメオ 75にバトンタッチ。

 

ここから25年間に渡って再びジュリエッタの名は消える事となります。

 

そして2010年のジュネーブショー。

 

アルファロメオ100周年に合わせて、四半世紀ぶりに「ジュリエッタ」の名を持つモデルが発表されました。

 

時代によって姿形をクーペ、セダンと変えてきたジュリエッタは、世相に合わせた「市民のクルマ」として、時代に合わせたCセグメントハッチバックとして復活したのです。

 

どの時代においても市民のメインストリームに合わせて形状を柔軟に変えてきたジュリエッタ。

 

3代目も11年のモデルライフでその役目を終え、今後はコンパクトSUVを後継に、という話がアルファロメオからも出てくるように、これからもその名は市民に寄り添った新たなモデルへと受け継がれていくのでしょう。

 

 

■全身でアルファロメオを体現するボディ


 

 

アルファロメオ伝統のデザインアイコンとして大きく配置された逆三角形の盾型グリルが目を引くエクステリア(外装)は、数多くのライバルひしめくCセグメントハッチバックの中にあってとにかく個性的のひとこと。

 

愛嬌のあるヘッドライトやバンパー下部のインレット形状は、アルファロメオ 8Cコンペティツィオーネからの流れを汲んだものとなっています。

 

 

サイドにはフロントから続くプレスラインが走りますが、Bピラー付近で一度この線が縦に広がり、またテールに向かって細まっていく……という、丸みや柔らかさといった部分を流麗に落とし込んだ造形となっています。

 

Cピラーに巧みに隠されたリアドアノブもクーペライクなスタイリングに寄与します。

 

 

バックビューも非常に凝ったラインを形成しており、見る角度によってさまざまな表情を覗かせるキャラクター性を持ちます。

 

そつなく仕上げる事も出来たであろう部分にもしっかりとイタリアンな空気を取り入れ、実に技アリなスタイリングをしている一台ですね。

 

ボディサイズは全長4,350mm×全幅1,800mm×全高は1,460mmとなっています。

 

 

■これぞ「粋」。妥協なきデザインのインテリア


 

 

随所に散りばめられたこだわりを見ることができるインテリア(内装)は、ジュリエッタの大きな魅力でしょう。

 

まずドライバーが最も多く触れる部分であるシートはスポーティながらしっかりとした座り心地と質感を持っています。

 

そして「盾」をデザインに落とし込んだステアリング。

 

イタリア語表記のガソリン計、水温計がビルトインされたアルファロメオ伝統の二眼メーター。

 

直感的に操作ができる各種スイッチ。

 

そしてその全てが人間工学に裏付けされた形状・配置でドライバーを包み込み、色使いなど華美さを控えた「粋」なイタリアを感じられるでしょう。

 

 

スポーティさとエレガントさを見事に両立したそのルックスは、近代におけるトレンドを細かく抑えた、所有感を満たすのに十分過ぎるほどの高揚に溢れています。

 

 

■"1750"という数字


 

 

日本仕様の場合、大きく分けてエンジンは1.4L 直列4気筒ターボ[125kW(170PS)/5,500rpm・230Nm(23.5kgm)/2,250rpm]と1.75L 直列4気筒ターボ[177kW(240PS)/5,750rpm・300Nm(30.6kgm)/1850rpm~340Nm(34.7kgm)/2,000rpm(Dynamicモード)]の二種類で、2019年モデルからは後者に統一されました。

 

1.4Lターボは「マルチエア」と呼ばれるダウンサイジングターボエンジンで、油圧と電子制御によるバルブコントロール機構を搭載するスポーティなもの。

 

惜しまれつつもラインアップから消えてしまったバリエーションですが、小排気量ゆえの軽快なレスポンスと、扱いきれるパワーバランスで大変魅力的なフィーリングとなっています。

 

そして注目すべきハイスペックエンジンが後者の1.75Lターボです。

 

アルファロメオにとってこの1.75……いえ、この場では「1750」と表記したいこちらの数字は重要なもので、過去に同社が製造していた名車たち(1750ベルリーナや1750GTV、古くは1929年製造の6C1750など)にも使われたアルファロメオ伝統の高性能を象徴する排気量なのです。

 

フィーリングはまさにラテンホットハッチの爆発力を象徴する強烈なもの。

 

組み合わされるALFA TCT(乾式デュアルクラッチ6速AT)のスムーズさと相まって、逞しい排気音とともに力強い加速を提供してくれます。

 

また、ALFA D.N.A.と呼ばれるパフォーマンス切替機構で「Dynamic(ダイナミック)」を選択すると、ここからさらなるトルクアップでまさに怒涛の加速を手に入れられます。

 

燃費はJC08モードで1.4Lターボは15.6km/L、1.75Lターボは10.8km/Lとなっています。

 

 

■ドライバーの運転を邪魔しない、適度な安全装備


 

 

スポーティな性格をしたジュリエッタですが、イマドキのクルマらしく安全装備もしっかりと装着。

 

走行に関する安定性を総合的にマネジメントするESC(Electronic Stability Control)はトラクションコントロールや横滑り防止装置を内包しており、高い安定性に寄与。

 

運転席、助手席に加えてウインドウとサイドにエアバッグが標準装備され、またチャイルドシート固定機構はヨーロッパ基準のISO FIXアンカーを搭載。

 

キャビンは衝撃吸収構造を備えた強固なフレームに守られ、その他光軸自動調整式ヘッドライト、タイヤ空気圧モニターシステム、ESS(エマージェンシー・ストップ・シグナル)なども装備され、5ドアハッチバックとしてファミリーユースでも気兼ねなく使えるようになっています。

 

 

■ラテンの血はあなたを待っています!


 

 

2020年末をもって惜しくも生産が終了し、次なる後継車はコンパクトSUVとも噂されているジュリエッタ。

 

その魅力についてはここまで書いてきた通りです。

 

その人気は根強く、中古市場が盛り上がっている一台でもあります。

 

今ならまだ高年式車も多く残されていますし、この記事で少しでもジュリエッタが気になった方がいらっしゃれば、お早目のご検討をおすすめします。

 

ようこそ、ラテンハッチバックの世界へ!

 

 

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