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水冷エンジンと空冷エンジンの違い、わかりますか?

内燃機関エンジンは熱との戦いです。

 

エンジンを構成する部品が正常に作動するためには、適正温度を超えないよう冷却する必要があります。

 

エンジンの冷却システムには、主に水冷式と空冷式があります。それぞれどんな特徴があるのでしょうか。

 

本記事では、その違いについて解説します。

 

 

ほとんどのクルマが水冷式


 

 

 

水冷式は、エンジン内に設けられたウォータージャケット(通り道)に水を循環させ、冷却させる方式のことです。

 

ウォーターポンプで送られた水は、シリンダーの周囲を通って熱を取り込み、ラジエターを通ることによって、熱を放出します。

 

水と言っても水道水ではなく、金属の腐食や錆を防ぎ、凍結を防止する専用の冷却水「クーラント」が使用されます。現在走っている乗用車のほとんどが、この水冷式です。

 

水冷式のメリットとしては、冷却能力が高いということです。

 

特に出力の大きなエンジンでは排熱の量も多いため、冷却能力の高さは重要な要素となります。

 

循環する冷却水の通り道は、サーモスタットと呼ばれる機構によってコントロールされており、温度管理もしやすく、安定して冷却することができます。

 

またウォータージャケットを通る水は壁にもなるため、メカニカルノイズを抑えることができ、結果的に静かなエンジンになります。

 

一方水冷式のデメリットとしては、構造が複雑になるため、部品点数と重量が増えることです。

 

必然的に冷却水の定期的な交換や、ラジエーター、パッキン、パイプの破損、消耗による冷却水漏れのチェックなど、重要項目としてのメンテナンスが増えます。

 

 

現在あまり採用されない空冷エンジン


 

空冷式は、外気の風をエンジンに当てて冷却する方式です。

 

そのため空冷式エンジンには、シリンダーの周囲に表面積を増やすためのフィンが取り付けられているのが特徴です。

 

空冷式には、走行風を当てて冷却する自然空冷式と、送風ファンによって強制的に風を当てて冷却する強制空冷式があります。

 

空冷式のメリットは、構造がシンプルなのでコストがかからないこと、メンテナンスが簡単であることが挙げられます。

 

しかし、空冷式は風を当てて冷却するため、気温や使用環境によっては十分な冷却や温度管理ができず、不安定な方式でもあります。

 

より冷却性能を高めようとすると冷却フィンや送風ファンを大きくしなければならず、エンジンそのものが大きくなってしまいます。

 

また水の壁もないためメカニカルノイズも多く、エンジン本体からの音が大きく聞こえます。

 

水冷式に比べるとデメリットが多い方式のため、空冷式は比較的排熱の少ない二輪車や農機具などの小型エンジンで採用されることが多く、近年の乗用車には採用されていません。

 

 

ポルシェやビートルに搭載されていた空冷エンジン


 

空冷式はシンプルな構造で低コストで作れるため、かつては多くの自動車メーカーが空冷式エンジンを採用していました。

 

前述したように、空冷エンジンはウォータージャケットを持たずエンジン本体からのノイズが外部に聞こえるため、静かなエンジンとは言い難いのですが、この独特の音が逆に良い味を出すと感じるクルマ好きは多いようです。

 

 

たとえば、フォルクスワーゲン・タイプ1(ビートル)には、強制空冷式水平対向4気筒エンジンが搭載されました。

 

1938年に生産が開始され、2003年に生産終了となるまで改良は重ねられたものの、基本的なレイアウトは変わらず、その耐久性と信頼性、味のあるエンジン音が多くの方に愛されました。

 

ビートルは、同クラスの中でも決して出力のあるエンジンを搭載していたわけではありませんが、それは高回転まで回らないよう意図的に設計することで、耐久性を優先させていたことも関係しています。

 

ですから走行時には、空冷特有の「バタバタ」とか「バラバラ」という感じの低く安定した味のある音を出します。

 

ビートルのアイコニックなかわいらしいデザインと味のあるエンジン音は、他のクルマにはない独特の魅力を放っています。

 

 

また、ポルシェ 911の4代目993型には、3.6L 空冷式水平対向6気筒エンジンが搭載されました。

 

このエンジンは、鈍い金属音と乾いた排気音、空冷ファンのノイズなどのハーモニーが独特の音を奏で、メカ好きには堪らないサウンドです。

 

1998年まで生産された993型でしたが、年々厳しくなる排ガス規制に対応するためには安定した冷却性能が必要とされるようになり、ポルシェ伝統の空冷式エンジンがここで途絶えることになりました。

 

「最後の空冷」と言われている993型はいまだにファンも多く、中古車市場は高騰しているようです。

 

内燃機関エンジンの技術の進歩により、燃焼効率は昔よりかなり高くなっています。

 

これは熱の発生が抑えられ、効率よく運動エネルギーに変えられているということです。

 

高いエネルギー効率の追求により、今後は冷却方式もさらに変化していくかもしれませんね。

 

 

 

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