3世代に渡る歴代Z4を振り返る
2002年に登場したBMWのオープンスポーツZ4は現行モデルで3代目となります。
販売開始時期的にもZ3の後継モデルとされることも多いこのモデル。
Z3とのコンセプト面での違いなどに触れつつ、3世代に及ぶ歴代モデルについて振り返っていきたいと思います。
■Z3よりもプレミアム化した後継モデル
Z4は2シーターオープンスポーツで、アメリカの工場で生産(初代モデルのみ)されており、アメリカ市場を非常に強く意識したパッケージングと生産体制と言えます。
これは1996年から2002年まで販売されていたZ3と同じであり、Z3の後継モデルとも言える存在です。
しかしZ4のボディサイズは全長4,091mm×全幅1,780mm×全高1,285mm、もしくは全長4,100mm×全幅1,781mm×全高1,299mmとなっていて、Z3の全長4,060mm×全幅1,740mm×全高1,280mmと比べて全長で40mm、全幅で41mm、全高で19mm大きくなり、Z3の価格帯が約350〜500万円だったのに対し、Z4は約450~600万円と価格帯も上になりました。
BMWはZ3の後継モデルと発表しつつも、プレミアム・セグメントへと移行する新世代のロードスターとアナウンスしました。
また、今まではボディカラーによって選択できるインテリアカラーなどに制限がありましたが、Z4では各種カラーやオプション選択を自由に個別で組み合わせて注文できるオーダーシステムが用意されました。
このような点からも車格を上げた様子が見受けられます。
■歴代で最多のバリエーションを誇る初代モデル
2002年にパリモーターショーで初公開となった初代Z4は、日本市場では2003年1月から受注開始となりました。
パワートレインやシャーシのベースは4世代目にあたるE46型3シリーズのものを使用し、電子制御電動パワーステアリングやスタビリティコントロールなどZ3時代に比べて電子制御化が進化。
当初日本市場に用意されたのは2.5Lと3.0Lの直列6気筒エンジン搭載グレードのみでしたが、後にエントリーグレードに当たる2.2Lと2.0L4気筒モデルが追加されています。
また、当初は5速もしくは6速ATしか用意されませんでしたが、シーケンシャルマニュアルギアボックスを有するSMGモデルが追加となりました。
2006年4月にマイナーチェンジ、このタイミングで固定ルーフのZ4クーペとMモデルであるZ4 MロードスターとZ4 Mクーペがラインアップに加わります。
ノーマルのZ4はフェイスリフトを受けた他、環境に配慮したエンジンのバージョンアップ、トランスミッションの多段化とパドルシフトの装備が行われました。
新たに加わった2つのMは当時販売されていた同社のスポーツカーM3のエンジンを搭載したスポーツモデルで、最高出力252kW(343PS)、最大トルク365Nm(37.2kgm)、0−100加速5.0秒というハイスペックを誇り、新設計のフロントサスペンションと強化されたリアサスペンション、そして徹底した軽量化が行われ全体的な性能向上が図られています。
なおトランスミッションは6速マニュアルのみとなっています。
■電動ハードトップを有する2代目モデル
2009年1月デトロイトモーターショーで2代目Z4は発表され、日本では同年5月から販売が開始されました。
先代モデルと比べるとスポーツカーよりもGTカー寄りに進化した2代目、大きな変更点としてはそれまでのソフトトップをやめ、電動ハードトップを採用している点です。
これにより車両重量はグレードによって多少異なりますが100キロ弱重たくなっています。
しかしアルミ製のルーフをおよそ20秒で開閉を完了させる電動ハードトップの採用により、遮音性が約50%向上し、後方視界も良くなっています。
また、電動ハードトップ採用はZ4クーペとZ4を一本化する意味合いをも意味しており、Z4クーペはラインアップされていません。
また先代モデルで途中から追加となったMモデルも結局最後までラインアップには加わりませんでした。
こう聞くとスポーツ性が失われたようにも思えますが、3段階のドライブモードを有するダイナミック・ドライビング・コントロールを標準装備し、オプション設定されたアダプティブMサスペンションなども用意され、走りの楽しさもしっかりと磨き挙げられたモデルとなっています。
■2年ぶりの復活となった現行3代目モデル
現行となる3代目モデルは2018年8月にアメリカで初お披露目となりました。
当時、日本ではZ4が一時的にラインアップから消えており、約2年ぶりの復活となる2019年3月に販売が開始されました。
先代では電動ハードトップでしたが、現行は再び電動ソフトトップへと戻されています。
なおエンジンやシャーシなどの基本コンポートはトヨタ スープラと共通のものとなっており、生産もスープラと同じオーストリアにあるマグナ・シュタイア社の工場で行われます。
軽量高剛性を目指したボディ、低重心を意識したレイアウトなど先代よりもスポーツカーらしい進化を遂げ、ソフトトップへの変更もあいまって約30キロの軽量化を実現しています。
10.25インチのコントロール・ディスプレイやフルデジタルメーター、ヘッドアップディスプレイなどインターフェースも近代的に進化。
さらに音声会話だけでナビやオーディオなどの各種操作が可能なBMWインテリジェント・パーソナル・アシスタントも搭載。
走りの性能だけでなく、先進的な進化も施されています。
■Z4はBMWの中で最も硬派なオープンモデル
Z4はBMWで最も硬派なオープンラインアップとも言えるでしょう。
単純に快適なオープンが欲しいならば4人乗れてZ4より荷物が詰める4シリーズカブリオレなど、同ブランドの中に他にも選択肢はあります。
2人しか乗れない、荷物もそこまで入らない、しかし運転での開放感はZ4に勝るクルマはそうないはずです。
単なるファッションだけでなく、移動中の運転も楽しみたい、そんな方が選ぶべきオープンカーそれがZ4なのです。