ミニ クーパーの「クーパー」って何?
「ミニ」と聞いて「ミニクーパー」という響きを思い出す方も多いはず、何となく聞き流しているこの「クーパー」ですが、一体どんな意味があるのか?
今回はミニのグレード名に用いられている「クーパー」について紹介していきます。
■クーパーとは人物名
このクーパーという名称はジョン・ニュートン・クーパーという人物名から由来しています。
彼の父、チャールズ・ニュートン・クーパーはイギリスでオートバイの修理やレーシングカーの整備を手がけていました。
1923年に生まれた彼はガレージを遊び場にし、免許取得前からオートバイを乗り回して育ちました。
そんな彼がオートバイや自動車が自然と好きになっていったのは言うまでもないでしょう。
当初ジョンは父と別に工作機械に関する事業をしていました。
第二次世界大戦が始まると工廠として徴兵に就きます。
そして第二次世界大戦が終わった翌年の1946年、この二人の親子は、事業を統一し「クーパー・カー・カンパニー」を設立します。
2人で立ち上げたこの会社は当初レーシングカーの製作をメインに手がけていきました。
■フォーミュラの世界でミッドシップ革命を起こす
そして設立して間も無く、クーパー・カー・カンパニーにとって最初のマシン、フォーミュラマシンの「クーパー500」を完成させます。
当時はまだFRレイアウトが基本であったフォーミュラマシンですが、このマシンは安価に作製することを視野に入れてか、ミッドシップのフィアット500のシャシーとオートバイ用の500ccエンジンを活用していました。
結果当時フォーミュラでは類を見ないミッドシップ・レイアウトのマシンが完成。
その理由は、オートバイのパワーユニットを流用するのに適していたからだそうですが、これが功を奏します。
クーパー 500は年々進化していき2.0Lエンジンを搭載するマシンにも肩を並べるタイムを出すようになります。
こうして速いと噂になったクーパー 500は、フォーミュラレースの世界で需要を生み出します。
エンジンも1.0Lクラスに拡大していき、入門フォーミュラレースで多くのドライバーがステアリングを握ることとなります。
その中にはスターリング・モスやピーター・コリンズなど、後のF1トップドライバーたちもいました。
その後、このクーパー 500はF3マシンとして認可、こうしてレーシングカー事業を軌道に乗せ、F2マシンなども手がけていったクーパー親子はモータースポーツの最高峰F1に挑みます。
1950年からクーパーのF2マシンなどでプライベーター(独立系レーシングチーム)たちがF1に参戦していましたが、1950年代中頃からワークス(メーカー専属のチーム)としても、スポット参戦を開始し、1958年シーズンから本格参戦を始めます。
そして1958年初戦のアルゼンチンGPでプライベーターのスターリング・モスが優勝を遂げます。
これはクーパーのマシンとして、そしてミッドシップマシンとして初のグランプリ優勝でした。
以降クーパーのF1での快進撃は続き、1959年、1960年とコンストラクターズタイトルを獲得し、ミッドシップというレイアウトを今日まで続くF1の常識にしました。
■ミニとクーパーの関係性
こうして優れたレーシングカーコンストラクターとして有名になったクーパー・カー・カンパニー。
小型車であったミニとの関係性が始まったのはクーパー・カー・カンパニーが急成長をしていた1960年頃でした。
ミニの設計者であったサー・アレック・イシゴニスは、レースを通じてジョンと出会います。
ジョンは小型大衆車であったミニに乗ると軽量コンパクトなボディ、そして何よりクイックなハンドリングを気に入ります。
そしてイシゴニスにミニのチューンナップをしたいと伝えました。
こうして848ccから997ccとパワフルなエンジン、強化した足回り、クロスしたギア比などが与えられたミニ、「ミニ クーパー」が誕生したのです。
このミニ クーパーには、当初ミニの高性能化に否定的だったイシゴニスも驚き、1962年にミニクーパーがラインアップに追加されました。
ミニクーパーは年々進化を遂げていき、最終的にエンジンは1,275ccにまで拡大され、1971年に生産を終了します。
このミニクーパーはモータースポーツの世界でも活躍し、モンテカルロラリーで1964年、1965年、1967年に優勝を遂げています。
■ニューミニでも感じられるクーパーへの敬意
21世紀になり、ミニブランドがBMWに買収され、BMWから新世代のミニ、通称「ニューミニ」が販売されるようになりました。
そしてこのニューミニのスポーツグレードには伝統に習って「クーパー」に名が冠され、後にクーパーよりもホットなモデルには「ジョン クーパー ワークス」と名付けられるようになりました。
BMW傘下であっても伝統を大切にしているのと、ジョン・ニュートン・クーパーへの敬意の表れでしょう。
優れたレースエンジニアだったジョン・ニュートン・クーパーの情熱がミニクーパーには息づいているのです。