映画を彩った往年の名車たち
映画の中でさり気なく登場する自動車のワンシーン。
時にそれがあまりにも美しくいつまでも脳裏に焼き付いてしまうこともあります。
今回はそんな名作の中に登場した名車たちをご紹介していきましょう。
■シトロエンDS

イギリスの小説家フレデリック・フォーサイズの原作をもとに1973年に映画化された「ジャッカルの日」。
1960年代のフランスを舞台に、大統領暗殺を画策するプロスナイパーのジャッカルと、彼を追いかける警察との攻防を描いた傑作です。
作中では緻密なジャッカルのこだわりが細やかに表現されており、特に暗殺用に特注された組み立て式銃のストイックなデザインやドライバーで細かく調整する様子が印象的でした。
そんな殺し屋のジャッカルが狙う仏大統領をはじめ、政府関係者の公用車となっていたのがシトロエンDSでした。
特にエリゼ宮の大統領府前に整然と並んだ黒いDSの隊列は息を呑むほどに美しい光景です。
そんなシトロエンDSとはシトロエンが1955年に発売したFFレイアウトの大型乗用車のこと。
前衛的なデザインの外観だけでなく内側にもシトロエン独自のハイドロニューマチックシステムを使ったメカニズムが採用され、ステアリング形状やブレーキペダルのカタチなどあらゆる面で独創的な1台でした。
実際にこのDSはフランス政府の公用車として使われており、シャルル・ド・ゴール大統領も愛用したことは有名です。
ちなみに劇中で主人公のジャッカルが乗るのは、フランス車ではなくイタリアのアルファロメオ スパイダーでした。
■ランボルギーニ ミウラ

イギリスを代表する名作「ミニミニ大作戦」。
原題は「ITALIAN JOB」という名前で、劇中クラシックミニが大活躍する英国車好きにはたまらない内容となっています。
そんな映画の冒頭に登場するのがランボルギーニ ミウラです。
峻険な山道のワインディングロードを優雅に駆け抜けたかと思いきや、突然の展開であっという間に画面から姿を消す瞬間が印象的でした。
またこのミウラはもうひとつ「個人教授」というフランス映画にも登場。
登場人物であるレーサーの愛車として登場する黄色いミウラは、パリの街並みと溶け合って何ともエレガントな雰囲気を醸し出しているのが印象的でした。
そんなランボルギーニ ミウラとは、好敵手であるフェラーリに対抗するべくフェルッチオ・ランボルギーニが世に送り出した名車のひとつ。
ベルトーネが手がけた流麗なデザインのボディに、V型12気筒のエンジンをミドシップに横置きで搭載されたスーパーカーです。
ミウラというのはスペインの闘牛飼育家であるドン・アントニオ・ミウラに由来するもので、以降ランボルギーニでは闘牛に関連するネーミングを採用するようになります。
長大なV型12気筒をミドシップに搭載するため工夫を凝らしたのはジャンパオロ・ダラーラとパオロ・スタンツァーニによるものでしたが、そのパオロ・スタンツァーニは後にあのカウンタックを生み出すことにもなるのです。
■フォード マスタング(初代)

1966年のカンヌ国際映画祭でグランプリを獲得した仏映画の「男と女」。
主人公であるレーサーのジャン・ルイとスタントマンの夫を亡くしたアンヌによる恋の物語なのですが、映画の冒頭に登場するフォード マスタング・コンバーチブルをはじめ、フォードGTやフェラーリ、ミニ、ポルシェといった錚々たる名車たちが登場します。
それもそのはずで劇中では本物のルマンの映像が盛り込まれたりモンテカルロラリーのシーンもあるなど、レース好きにも必見の名作となっています。
この映画に登場するフォード マスタングは1964年に発売された初代モデルで、当時からすでにハードトップとコンバーチブルが用意されていました。
初代マスタングはT型フォードに続くメガヒットを記録し、現在まで連綿とその後継モデルが作り続けられています。
またこのマスタングを有名にしたもうひとつの映画といえば「ブリット」です。
スティーブ・マックイーン扮するブリット刑事の愛車として登場するダークグリーンのマスタングが、サンフランシスコの名物である急こう配を飛び跳ねながらダッジ チャージャーと死闘を繰り広げるシーンは今観ても興奮を覚えます。
■ポルシェ911

1971年に公開された「栄光のルマン」。
ルマン24時間レースを舞台にしたアメリカ人レーサーの物語で、主人公を演じるのはプライベートでも無類のクルマ好きだったスティーブ・マックイーンでした。
劇中では実際のルマンの映像も使われており、モータースポーツファンからの支持も高かった作品です。
この映画の冒頭に登場するのが美しいグレー色のポルシェ911Sですが、このクルマは実際にマックイーンが所有していた1台でした。
このほかにも映画「スパイゲーム」で主人公のロバート・レッドフォードが通勤のために乗っていたナローポルシェも印象的で、CIAのゲートをくぐる際のバックショットではナロー特有の小さなボディが際立って映し出されていました。
そんなポルシェ911とは、ポルシェを代表する1台としてあまりにも有名です。
1964年の発売から現在まで2+2のRRレイアウトという形式を守り続けてきたスポーツカーで、途中で空冷から水冷へと移行はしたものの現在まで途切れることなく発売されています。
またポルシェ911はこれ以外にも数多くの映画に登場し、映画のワンシーンを美しく演出しています。
■アルファロメオ スパイダー(シリーズ1)

サイモン&ガーファンクルのテーマ曲でも有名な映画「卒業」。
ダスティン・ホフマン演じる大学生ベンジャミンと恋人であるエレーン、そしてエレーンの母親であるミセス・ロビンソンによる青春映画の金字塔です。
その中で主人公のベンジャミンが父親から卒業祝いにプレゼントされたのがアルファロメオ スパイダーでした。
劇中ではベンジャミンがこのスパイダーに恋人や母親のミセス・ロビンソンを乗せて走り回るシーンが頻繁に登場。
特にエレーンと一緒にスパイダーの幌を閉じてハンバーガーを食べるワンシーンが印象的でした。
最後の教会へと向かうシーンでは故障によってスパイダーが止まってしまい、そのままスパイダーが乗り捨てられ、最後は愛車ではなくバスに乗って去るシーンで終わるのも印象的でした。
劇中に登場するのは1966年型のアルファロメオ スパイダーで、1600スパイダー デュエットとも呼ばれています。
ボートテールと呼ばれるリヤセクションの形状が印象的な2シーターのオープンカーで、1697年には排気量の拡大によりアルファロメオ1750スパイダー ヴェローチェという名前になっています。
時に作品の重要な要素として用いられることもあった名車たち。
美しい映像や心を揺さぶる脚本のスパイスとして、往年の名車が使われているのはクルマ好きにとっては実に嬉しいものです。
これからもきっと、映画の中でさり気なく未来の名車たちが散りばめてゆくことでしょう。




