FRだって知ってました!? BMWのコンパクトモデル
日本車に限らずコンパクトクラスのクルマは、パッケージングの優位さからFFレイアウトを基本とするのが一般的です。しかしBMWのコンパクトクラスである1シリーズは、先代モデルまでFRレイアウトを採用。
兄弟車の2シリーズクーペは、現行型でもFRを採用しています。コンパクトクラスとしては数少ないFRレイアウトで、クルマ好きから支持される隠れた名車の先代1シリーズと2シリーズに注目してみましょう。
■FRレイアウトがイイ理由
最近ではFRレイアウトのモデルが、めっきり少なくなってしまいました。
前輪の仕事が操舵のみとなるFRレイアウトは、エンジンを縦置きする関係でフロントのホイールハウススペースにゆとりができ、くわえて前輪の仕事を操舵だけに絞れるのでサスペンション設計の自由度が高まり、ハンドリング性能を追求しやすいというメリットがあります。
また前後の重量バランス的にもエンジン、ミッション、デファレンシャルがひとまとめになったFF(前輪駆動)に比べて有利で、スポーティな走りが期待できますし、クルマが加速する際には荷重のかかる後輪が駆動輪になるのでトラクションもかかりやすくなります。
パワーのあるエンジンを搭載した車両だと特に実感しやすいのですが、FFよりも安定した加速とナチュラルなハンドリング性能はFRレイアウトのメリットです。 BMWは「駆け抜ける歓び」というテーマを掲げているだけあって、昔からスポーティなハンドリング性能にこだわっています。
伝統的にFRレイアウトを採用してきたのにも、こうした理由があるのでしょう。
■コンパクトカーにFRが少ないワケ
前述したようにFF車の多くは、エンジンとトランスミッション、デフをひとまとめに横置きで配置するので、フロントのエンジンルーム以降はすべて室内空間にあてることができます。
さらにプロペラシャフトやリアアクスルのデフもないため、室内のフロアはほぼフラットに設計することが可能など、コンパクトカーのようなに限られたサイズのモデルでは室内を広くできるというメリットがあります。
またコンパクトにまとまったパワートレインは、生産コストの削減や車体の軽量化に好影響。そのため現代のコンパクトカーのほとんどは、FFレイアウトを採用しているのです。
■コンパクトなのにFRが魅力の先代1シリーズ
BMW初のコンパクトハッチバックとなる1シリーズ(E87型)が発売されたのは2004年のことでした。 3シリーズのプラットフォームを使い製作された初代1シリーズは、コンパクトセグメントでは唯一のFRレイアウトを採用。
ショートワゴンのようなスタイリングに、3.0Lの直6エンジンが搭載されたモデルもありました。 その2代目にあたる1シリーズは2011年から2019年に販売されたモデルです。
全長4,335mm×全幅1,765mm×全高1,440mmのボディと、ホイールベース2,690mmに搭載されたエンジンは、2015年のフェイスリフトを境に前期が118iと120iに出力の異なる1.6L 直4ツインスクロールターボとM135i 用の3.0L直6ターボ。
後期は118iが1.5L直3ターボとなり、120iは2.0L直4ターボに拡大、さらに2.0L 直4ディーゼルターボの118dが追加されました。 またM135iの3.0L直6ターボは出力を向上し、モデル名をM140iに変更しました。
2015年以降のモデルでは、シャープな印象を与えるフロント・ヘッドライトや存在感のあるキドニー・グリル、L字形リアコンビネーションライトなど、デザインが一新されています。
■2シリーズクーペ&カブリオレ
1シリーズクーペ(E82型)の後継モデルとなる2シリーズのクーペ&カブリオレは、BMWのモデルライン整理に合わせて2013年に登場。日本では2014年に販売が開始されました。
デザインはキドニーグリルとシャープなヘッドライトが個性を主張し、サイドビューはBMWらしいスポーティで躍動的なキャラクターラインがコンパクトながらラグジュアリーな雰囲気を演出しています。
エンジンは、220iの2.0L 直4ターボとM235i用の3.0L直6ターボの2つで、2016年にはコンパクトモデルでは初めてのMモデルとなるM2にも3.0L直6ターボが搭載されていました。
2シリーズをややこしくしているのはいのはミニバンのアクティブツアラーとグランツアラーで、こちらはミニと共通のプラットフォームを使ったFFレイアウトです。
■もっとも小さいMモデル
BMWが長年にわたって参加してきたモータースポーツの経験やノウハウを凝縮したモデルが「M」シリーズです。M2はそのなかでもっともコンパクトなモデルで、2016年1月に販売が開始されました。
ボディサイズは全長4,475mm×全幅1,855mm×全高1,410mm、ホイールベースは2,695mm。 フロントスポイラーには台形のブレードと大型エアインテークが備えられ、空力性能とともに高出力エンジンとブレーキのための高い冷却効果を提供しています。
これらの機能的なパーツがM2の美しさを形成しているとも言えるでしょう。 搭載されるエンジンは、M235iと同じ3.0L 直6DOHCターボですが、最高出力は44馬力アップの272kW(370PS)/6,500rpm、最大トルクは15Nmアップの465Nm(47.4kgm)/1,400-5,560rpm。 ターボエンジンながら自然吸気エンジンのような吹け上がりで、約50:50の理想的な重量配分による俊敏なハンドリング性能とともに高性能スポーツカーの世界観を堪能できます。
BMWのスポーティな性能にこだわるなら、やはりFRレイアウトによる優れたハンドリングははずせない要素です。 1シリーズがミニと同じFFシャシーになったいま、2シリーズのFF化もそう遠くない将来に敢行されるでしょう。
あえてパッケージ的に不利なFRのコンパクトカーに乗れるのもあとわずか。BMW本来の”駆け抜ける喜び”を堪能したいなら、いましかありません。