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レースの世界ではおなじみ エアロダイナミクスの仕組みとは?

 

 

レースカー好きであればいちどは耳にしたことのあるだろう”エアロダイナミクス”というワード。

 

直訳すれば空理力学という意味ですが、自動車に用いる場合、これはいったいどのような意味になるでしょうか。

 

そんな知っているようで知らないエアロダイナミクスについて考察したいと思います。

 

 

 

■空気と友達になる


 

エアロダイナミクスとは、空気の流れが物体におよぼす影響をあつかう流体力学の一種です。

自動車の場合は、走行する際に影響を受ける空気の流れ(空気抵抗)について考察することで、さまざまな効果を生み出すのがエアロダイナミクスといえるでしょう。

 

一般的に自動車は、速度を増すほど空気の抵抗が高まり性能への足かせとなるため、いかに効率よく後方へ空気を受け流すかが重要になります。

そのため、現代の市販車は、私たちが想像する以上にエアロダイナミクスが研究され、それにともなうデザインが施されています。

 

そのいっぽうで、モータースポーツの世界では空力を利用して、車体を地面に押し付けるダウンフォースを発生させることも行い、高速走行での安定性や旋回性能の向上に役立っています。

 

 

■空気抵抗をあらわすCd値とは?


 

自動車における空気抵抗をあらわすものとして知られるのがCd値というものです。

Coefficient of Dragの略称で、日本語では”空気抵抗係数”と呼ばれています。

 

この係数は、自動車の空気の流れがどれくらいスムーズなのかを数値としてあらわしたもので、その値が小さくなるほど空気抵抗が少ないことを意味します。

しかし自動車が走行する際の空気抵抗は、Cd値だけではあらわすことができず、実際にはCd値に前方投影面積を掛け合わせたCdA値を用います。

 

前方投影面積とは、自動車を正面から見たときの面積のことで、この面積が大きいほど空気抵抗は大きくなります。 同じ自動車でも流線型のスポーツカーと実用性の高いミニバンでは、その面積の違いは一目瞭然。

そんな前方投影面積を加味したCdA値こそが、自動車における空気抵抗を正しく反映したものといえます。

 

 

■ダウンフォースとは


 

自動車における空気力学において重要なものに、ダウンフォース(負の揚力)というものがあります。

 

誤解を恐れずに言ってしまえば、ダウンフォースがなければクルマは飛ばずとも、舞い上がることはあるでしょう。

ちなみに揚力は、物体を浮き上がらせるように上向きに働く力のことで、ダウンフォース(負の揚力)は空気の力が下向きに働くことで、走行中の車体を路面に押し付けます。

 

ワンメイクのタイヤで争うF1などの場合、タイヤのグリップ力はイコールコンディションなので、ダウンフォースを使って車両のタイヤを路面に押し付ける力を高め、同時に高速で走る車体を安定させています。

 

ダウンフォースを生み出すものとして一般的に知られているのがリヤスポイラーやリヤウイングですが、車体の外側に取り付ける各エアロパーツや車体下に取り付けるディフューザーなどによってもダウンフォースを生み出せるなどの研究が行われています。

 

 

■市販車によるエアロダイナミクスの恩恵


 

レースシーンではとりわけ重要なエアロダイナミクスですが、その効果を一般道や市販車でも得ることができるのでしょうか。

 

空気抵抗は、自動車の走行速度が高ければ高いほどその効果が増すといわれています。

空気抵抗は、速度の二乗に比例して大きくなるため、速度が高いほど効果はあらわれますが、日常の走行シーンではそれらを体感するほどの速度域で走行することはなかなかありません。

 

趣味でサーキット走行を行ったりする方であれば、車両に装着されたパーツのエアロダイナミクス効果を味わうこともできるはずですが、一般道の速度域ではほぼその効果は発揮されません。

とはいえ、空気抵抗の大小は自動車の燃費に影響しますから、ガソリンスタンドで給油したときのレシートで、その影響を感じるかもしれませんね。

 

一般車両の燃費性能を高めるのであれば、できるだけCdA値は小さいほうが有利です。

しかし、小さくしすぎると高速でクルマが浮き上がったり、横風に煽られやすくなったりと、車両の動きが不安定になるので、まったくゼロにすることはできません(設計上も無理ですが…)。

いっぽうレースカーでは、ダンフォースを効かせすぎると燃費の悪化や、タイヤの摩耗に影響しますから、最適なポイントを見つけることがデザイナーの仕事になります。

 

 

このようにエアロダイナミクスは、クルマが走行するうえで重要なファクターとなっているのです。