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似て非なる2台。アウディTTとプジョーRCZ

 

マツダ ロードスターのように気軽に乗れて扱いやすいサイズでありながら、プレミアムカーのテイストを存分に感じられるコンパクトなスポーツクーペといえば、アウディTTを真っ先に思い浮かべる方も少なくありません。

 

そのアウディTTに対抗するように、2010年にフランスのプジョーからリリースされたクーペモデルが、「RCZ」です。

 

見た目の雰囲気やコンセプトなど似た部分が感じられる2台ですが、それぞれどのような魅力があるのでしょうか?

 

 

■現行型アウディTTは3代目


 

初代のアウディTTは1998年発売、現行型は2014年に発表された3代目です。

 

 

プラットフォームはフォルクスワーゲングループのMQBで、ドアやボンネット、テールゲート、フェンダー、ルーフなどにアルミニウムパネルを用い、軽量と高剛性を両立させています。

 

ボディサイズは、全長4,190mm×全幅1,830mm×全高1,380mm(TTクーペ)。

 

カローラよりも全長の短いコンパクトなボディに、大型で幅広のシングルフレームグリルに鋭い表情を作り出す薄型のヘッドライト、優雅で伸びやかなリアセクションなど、最新のデザイン言語を取り入れつつ、アウディTTの特徴的なディテールとプレミアム感が随所に感じられるエクステリア(外観)となっています。

 

パワートレインには、2.0L直噴ガソリンターボエンジンや、アウディ独自の4WDシステム「クアトロ」も設定され、ダイナミックなパフォーマンスを思う存分楽しむことができます。

 

 

■一代で消えたプジョーRCZ


 

 

プジョーRCZは、2010年に販売が開始された2+2(後席が補助的な役割となる4人乗り)のコンパクトなクーペモデルです。

 

プラットフォームは、ハッチバックモデルの308と共通ですが、ラリーや耐久レースで培ってきたノウハウを生かした専用チューニングにより、プジョーならではのしなやかなハンドリングと乗り心地を楽しむことができます。

 

ボディサイズは、全長4,290mm×全幅1,845mm×全高1,360mmというロー&ワイドなプロポーション。

 

フロントの大型ロアグリルとスタイリッシュなヘッドランプ、そしてピラーからリアセクションまで続く幅広パネルの“アルミナムアーチ”のメタリックな鈍い輝き、ふたつのコブを思わせる膨らみを持たせた“ダブルバブルルーフ”、大型のリアコンビネーションランプやボリューム感のあるフェンダーなど、ダイナミックなドライビングを予感させるエクステリアデザインがRCZの個性にもなっていました。

 

スポーツクーペモデルとして市場に大きなインパクトを与えたモデルでしたが、販売されたのは2010年から2015年までで、新型が投入されることなくカタログ落ちしてしまいました。

 

 

■リアシートは非常用と割り切っておいたほうがいい


 

アウディTTのインテリアは、水平基調のシンプルな線と面によって構成されたインパネと、ドライバー側に傾けられた操作パネルや丸型の空調ルーバー、アルミ調の加飾といったディテールが、ドライブへの気分を高めてくれます。

 

 

メーターパネルは全面液晶ディスプレイとなる「アウディ・バーチャル・コクピット」が採用され、先進的な印象です。

 

フロントシートはサイドまでしっかりホールドしてくれるスポーツシートで、シートカラーもブラックの他にブラウンやレッド、グレーなど豊富に用意されています。

 

リアシートは2座あるもののエマージェンシー的なもの。

 

そのリアシートを畳めば、約700L のラゲッジスペースが現れます。

 

対するプジョーRCZのインパネは、機能的に配置されたスイッチ類や丸型の空調ルーバー、アナログ式のスピードメーターや時計といった機能性を重視したデザインを採用しつつ、クロームの加飾やアルミニウム素材を積極的に用いることで、プレミアム感のある雰囲気も演出しています。

 

 

フロントシートは、ホールド性に優れたヘッドレスト一体型のバケットタイプを採用しています。

 

シート生地にはナッパレザーを使用し、高いフィット感と快適な乗り心地を提供しています。

 

こちらもリアシートはあるもののほぼエマージェンシー用というシロモノで、通常はシートバックを倒した状態ラゲッジスペース(639L)として使うことになるでしょう。

 

いずれもスポーツクーペでありながら、長距離ドライブに対応できる実用性があるのは、嬉しいポイントです。

 

 

■RC Zはマニュアルミッションがネック


 

 

現行型アウディTTに搭載されるエンジンはダウンサイジングコンセプトの2.0Lガソリンターボで、最高出力145kW(197ps)/4,350-6,000rpm&最大トルク320Nm(32.6kgm)/1,500-4,200rpm、最高出力180kW(245ps)/5,000-6,700rpm&最大トルク370Nm(37.7kgm)/1,600-4,300rpm、最高出力225kW(306ps)/5,400-6,500rpm&最大トルク400Nm(40.8kgm)/2,000-5,300rpmという3種類の異なる出力が用意され、もっと出力の低いエンジンがFF、中間がクワトロ、もっともハイスペックなエンジンはTT Sクーペと、使い分けられています。

 

いっぽうプジョーRCZにはBMWと共同開発した1.6L直噴ガソリンターボエンジンが搭載され、こちらも3種類の出力の異なるエンジンを用意。

 

駆動方式は、すべてFFのみでした。

 

 

もっともベーシックモデルに搭載されたエンジンは、最高出力147kW(200ps)/5,800rpm&最大トルク275Nm/1,700rpmで、トランスミッションは6速MT。

 

もうひとつは最高出力115kW(156ps)/6,000rpm&最大トルク240Nm/1,400-3,500rpmで、こちらは6速ATでこの2つがレギュラーモデル。

 

そして限定で販売された「RCZ R」に搭載されたのは、最高出力270ps(199kW)/6,000rpm&最大トルク:330Nm/1,900rpmというスペックで、トランスミッションは6速MTでした。

 

 

■先進安全装備は、やや物足りないかも


 

アウディTTのおもな安全装備は、アウディサイドアシスト(ブラインドスポットアシスト)にはじまり、リアビューカメラ、電子制御式パーキングブレーキ、クルーズコントロール(30km/h以上で作動)、タイヤプレッシャーワーニングなどです。

 

 

対するプジョーRCZは、アクティブボンネット、ブレーキアシスト、フロント/バックソナー、オートヘッドライト、ESP(エレクトロニック・スタビリティ・プログラム)など。

 

どちらも最新のモデルに比べると先進安全運転支援機能としてはやや物足りない印象ですが、スポーツカーという特性を考えると、必要な装備が十分備えられていると言っても良いでしょう。

 

 

■予算300万円で狙える


 

気になる中古車相場ですが、アウディTTの現行型は、新しいことと4WDのクワトロモデルや上級グレードのTT Sが含まれているので、約210〜580万円と幅広くなっています。

 

対するプジョーRCZは、約90〜290万円。FFモデルに絞って比較すると、かなり良いライバルといえそう。

 

どうしてもTTの4WD モデルであるクワトロがほしいのであれば、先代に目を向けるのもひとつの手です。

 

プレミアムメーカーらしいしっかりとした作り込みと高級感、高い走行性能が魅力のアウディTTに対し、プジョーRCZはロー&ワイドで躍動感のあるスタイリングや機能的なインテリア、実用的なラゲッジルーム、1.6Lエンジンによる軽快な走りが魅力です。

 

 

モデルとしてはプジョーのほうが古くなりますが、スポーツクーペとしてのハンドリングやトータルでの完成度が高く、いまだにファンが多いのもうなずけます。

 

価格と性能のバランスを考えると、RCZの選択肢はおおいにアリでなないでしょうか。

 

 

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