【911なのに992?】わかりにくいポルシェ911の型式を解説
フラットシックス、RRレイアウトにこだわり、58年ものあいだポルシェのフラッグシップとして、数々のムーブメントを巻き起こしてきた911。
しかし、911は、991や992などと呼び名が複雑で、わかりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。
そこで、911のモデル名の起源や歴代の型式・特徴をわかりやすく解説してみました。
■911の型式の起源|伝統にのっとったモデル名のはずが...
カーデザインを手掛ける企業として設立されたポルシェでは、依頼を受けたデビュー前のモデルを指す際に、社内用に付けられたタイプナンバー(車両開発コード・型式)で呼ぶのが常でした。
その後、カーメーカーへと転身を遂げたポルシェですが、記念すべき自社製モデル第1号車に、慣れ親しんだタイプナンバーをそのまま正式モデル名として採用、そのモデルこそが911の先代車にあたる356です。
356後継モデルでも、その正式モデル名には、伝統にのっとりタイプナンバー901がそのまま使われるはずでした。
しかし、フランスプジョー社が、数値3桁に中央を0としたモデル名は、自社の商標であるとしたため、やむなく901を断念、モデル名は中央を1に置き換え、911へと変更されたのです。
以来、60年近い歴史を持つフラッグシップへと成長を遂げた911は、そのモデル名のほかにも、区別するうえで型式が用いられることが多く、991や992は歴代の型式にあたります。
■これでスッキリ!911の型式・特徴を一挙紹介
【初代ポルシェ911(901)】
1963年、フランクフルトモーターショーでワールドプレミアが実施された初代ポルシェ911は、そのコードネーム・型式から901と呼ばれます。
901は、狭いを意味するnarrow(ナロー)やナローポルシェの名で呼ばれ、この呼び名は先代356より車幅が狭かったことに由来しています。
901に搭載された96kW(130PS)の新開発空冷水平対向6気筒エンジンは、従来のものと比べ静粛性と高出力を実現し、最高速度は210km/Lに達しました。
1972年には、伝説の公道レースへのオマージュモデル 911カレラRSが誕生。
同モデルは、レース出場のためのいわゆるホモロゲモデルで、特徴的なダックテイルと圧倒的パワーで、熱い支持を受けました。
【2代目ポルシェ930】
ポルシェ911の2代目にあたる930型は、米国での安全基準をクリアするため、蛇腹が入った大きなバンパーが特徴で、通称ビッグバンパーと呼ばれます。
930型は、1973年から1989年の長きにわたり改良と熟成を重ねたモデルで、日本でもスーパーカーブームにより広く認知され、その年代層がポルシェとしてまず思い浮かべるのは、930型でしょう。
1974年には、以降ポルシェの代名詞とも言えるターボを初搭載する911ターボが発表されました。
同モデルは、191kW(260PS)を発揮する3.0L 空冷水平対向6気筒ターボで、1977年にはインタークーラー搭載の911ターボ3.3が登場、最高出力も221kW(300PS)まで高められ、抜群のパフォーマンスを誇っています。
また、この代からオープントップのカブリオレがあらたに加わり、バラエティ豊かなラインアップとなりました。
【3代目ポルシェ964】
人気モデル930の後継として1988年に発表されたのが、3代目となる964型です。
964では、これまでのプラットフォームを全面的に刷新し、およそ85%ものパーツを新しくするなど、現代的でモダンな911へと生まれ変わっています。
先進的技術も多数取り入れられ、なかでもトランスミッションに採用されたティプトロニックは、現在のPDKに継承される画期的なものでした。
ティプトロニックいわゆるTIPは、1990年に登場したカレラ2で初採用され、シフトレバーを前後に操作するだけで、アクセル開度やエンジン回転数、車速などに応じて自動で変速するMTモード付きATです。
また、911シリーズ初となる4WDモデルのカレラ4が誕生したのも、964型が始まりとなっています。
【4代目ポルシェ993】
1993年、964のあとを受け、4代目ポルシェ911として登場したのが993型です。
993は、空冷式エンジン搭載最終モデルで、エンジン自体が奏でる低音で響くような特徴ある空冷サウンドと、踏み込んだ分だけ加速していく応答性の高さから、未だにファンから熱い支持を受けています。
デザインでは、964のデザインは大筋で継承するものの、フロントフェンダーやヘッドランプの形状はよりフラットなものに、リアデザインもテールランプが直線的なものに変更されました。
また、964のタルガでは、先代まで手動取り外しとしたルーフトップが、電動大型スライディングルーフに変更がかけられたのも大きなトピックです。
エンジンは、カレラとタルガで最高出力200kW(272PS)を発揮する3.6L 空冷水平対向6気筒エンジンを搭載、1996年には可変吸気システム・バリオラム採用などにより、最高出力は210kW(285PS)に高められています。
【5代目ポルシェ996】
911初の水冷式エンジンを搭載した996型が、1997年本国デビューを飾り、日本では1998年に販売が開始されました。
996は、エンジン刷新に伴い、デザインでも先代までのフェンダーが張り出した911特有のフォルムからの脱却を図り、ボディを大型化させ、ヘッドランプも丸形からボクスターと共有の変形型を採用、現代版流麗スタイルへと進化しています。
エンジンは、この代からDOHC化を図り、デビュー当初は3.4L 水平対向6気筒を搭載、2002年には排気量が3.6Lに拡大されています。
996は、パフォーマンスグレードのバリエーションが豊富で、1999年にはカレラRSの伝統を継承するGT3がデビュー。
同モデルは、セラミックブレーキを標準装備し、抜群の瞬発力と確かな制動性から究極のスポーツカーとなりました。
また、2000年にはエンジン、シャシー、サスペンションなどを大幅にサーキット仕様とした最高速300km/h越えのスパルタンなモデル、GT2もデビューしています。
【6代目ポルシェ997】
2004年、911はフルモデルチェンジが実施され、6代目997型となりました。
997のデザインでは、ボクスター共有の変形ヘッドランプが見直され、歴代の伝統にのっとり丸形に戻されています。
エンジンは、カレラに239kW(325PS)を発揮する3.6L 水平対向6気筒が搭載され、カレラSには261kW(355PS)に達する3.8L水平対向6気筒が搭載されました。
また、カレラSのサスペンションには、路面状況に応じダンパーの減衰力を自動で制御するポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム(PASM)を標準装備。
2008年には、エンジンの直噴化やATがPDKとなったのも大きなトピックです。
【7代目ポルシェ991】
ポルシェ911は、2011年に7代目991型にフルモデルチェンジが実施されました。
991では、先代より全長・ホイールベースが大きくなり快適性が向上し、シャシーのハイブリッド構造により剛性・燃費性を高めたのが特長です。
2015年9月のマイナーチェンジを境にした前期型と後期型で、搭載エンジンに大きな違いがあるのもポイントです。
前期型では、従来通りカレラやタルガには、排気量・出力の違う水平対向6気筒NAエンジンが搭載されています。
一方、マイナーチェンジ後の後期型では、カレラやタルガを3.0Lにダウンサイジングするとともに、ツインターボ化し出力向上を図っています。
また、車体のロールを抑制する可変スタビライザーのポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールシステム(PDCC)や、高性能7速MTも991の画期的な先端技術です。
【8代目ポルシェ992】
2018年11月にマイナーチェンジが実施され、現行モデル8代目992型となったポルシェ911は、日本では2019年7月から販売を開始しました。
当初投入されたのは、カレラSとカレラ4S カブリオレで、その後ターボ系、GT系などと、ラインアップ・バリエーションを拡大しています。
992は、ヘッドランプの丸形やボンネットに入ったプレスラインが歴代の911を彷彿とさせる一方、ヘッドランプには新設計のLED採用や、リアコンビネーションをスプリットライトで一直線に結ぶデザインが、新世代の911を感じさせます。
パワートレインでは、カレラS、カレラ4Sで331kW(450PS)を発揮する3.0L 水平対向6気筒ツインターボを搭載、トランスミッションには新開発の8速PDKが採用されました。
また、衝突被害軽減ブレーキやレーンキープアシストをはじめとする先進安全技術や、インフォテインメントシステムの充実化も992では、大きく進化した点です。
■奥が深い911はポルシェの歴史が凝縮!
こうして見てみると、60年近くもフラッグシップに君臨する911には、ポルシェの歴史がそのまま凝縮していると言っても、過言ではありません。
911を押さえておくなら、ナローから993までの空冷エンジンを積むクラシックのほかにも、歴代のカレラ系やタルガに焦点をあてお気に入りを見つける、ターボ系に焦点をあて変遷を追ってみるなど、様々な楽しみ方があります。
また、GT系にしぼり、程度の良い中古車を見つけるのもおすすめです。
ぜひ、あなたもポルシェ911をチェックしてみましょう。